光のもとでⅠ
 あの頃は御園生さんの妹と兄さんが話していた患者が同一人物とは思いもしなかった。
 それらが同一人物と知ったのはずいぶん経ってからのことだった。
「少し体が弱いとか、そういう類のもではないのでしょう? それを抱えてきたとして、まだ十七歳なのよ」
「俺も十七なんだけど……」
「司が生きてきた十七年間と彼女が生きてきた十七年間は違うわ。それを同じモノサシで考えちゃだめよ?」
 モノサシ――。
「司の場合はプライドが邪魔して具合が悪いことを言いたくないって感じかしらね? じゃぁ、翠葉ちゃんはどうかしら? 体調が悪いことを言えば心配をかけることがわかってる。だから言いづらい。……発見が遅れたらどうするとか、大ごとになってからじゃ遅いとか、そんな理由だけで人に言えるのならプライドも何もないわ」
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