光のもとでⅠ
「どうしたらそういう気持ちを理解できる?」
「え?」
 キッチンに入る寸前の母さんが振り向いた。
「どうしたら――翠の気持ちがわかるようになる?」
「……それは、気持ちを話してほしいということ?」
「違う……。話してくれたとして、その気持ちが理解できそうにないって話」
 真面目に答えたつもりだった。
 けど、母さんはきょとんとしたあと、クスクスと笑いながらキッチンへ入っていった。
 なんで笑われているのかわかりかねて、直前の会話を反芻しようとしたとき、
「――っわ」
 完全に油断していた。
 足元に擦り寄ってきたハナについ声を上げる。
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