光のもとでⅠ
「ハナ、悪い……」
 あと少しで蹴飛ばすところだった。
 抱き上げると、「失礼ね」という目で見られた。
 こういうところ、犬よりも猫っぽい。
「ミントティーをベースにタイムを淹れたの」
 キッチンから戻ってきた母さんに差し出されたカップには、摘みたてであろうミントが浮かんでいた。
 香りは香草よりも煎じ薬っぽい。
「タイムは消化促進と身体を温める効果があるわ。喉にもいいのよ? 風邪、早く治しなさいね」
 飲むか飲むまいか、とカップを見ていると、
「わからないのなら、わかるまで訊いてみたらどう?」
 急にさっきの話に戻された。
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