光のもとでⅠ
 兄さんはベッドを背にしてラグに座った。
 後ろ姿だと秋兄と瓜二つで変な錯覚を起しそうになる。
「彼女はさ、具合が悪くなると周りの人に心配かけることを嫌というほど知ってるんだよね。だから言えないんじゃないかな。心配されることがつらくて……」
 でも、それを認めてしまったら――。
「司、患者さんがひとりひとり心に抱える不安は別ものだよ。医者は治療だけをすればいいと思ってるか?」
 基本的には……。
「症状がつらくて心までつらくなっている患者さんは治療だけじゃ救えないと思わない?」
「…………」
「ま、おまえにとって翠葉ちゃんは患者じゃないけどな」
 そう言って、兄さんは俺を見て笑った。
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