光のもとでⅠ
 マンションに戻れば蔵元がいた。
「会いたかった姫君にようやく会えたのでしょう? なんて顔をしてるんですか」
 誰にも吐き出せないと思った。
 でも、蔵元には話せた。
「そうでしたか……。藤原さんもずいぶんと酷なことをなさいますね。秋斗様にも司様にも、翠葉お嬢様にも……」
 蔵元に言われて気づいた俺はバカだと思う。
 そうだ――あのとき、つらかったのは俺だけじゃなかった。
 司だってつらかったはずだし、翠葉ちゃんは記憶がないとはいえ、再現している俺の気持ちを考えないような子ではない。
 わからないといいつつも、思い出せなくてごめんなさい、言わせてごめんなさい、と謝る子だった。
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