光のもとでⅠ
 それは、学校へ私が通える環境を整える、というものも含まれているのだろう。
「お父さん……ありがとう」
 ポスン、とお父さんの胸に額を預ける。
「うん?」
「治療のことも、学校へ通う環境のことも、全部……。全部、ありがとう」
「……いいんだよ。翠葉が幸せになるのなら」
 お父さんはそう言って抱きしめてくれた。

 マンションでは栞さんとコンシェルジュが出迎えてくれた。
 九階でエレベーターを降りると、美波さんがポーチにいるのが見えた。
 けれども、挨拶をする前につい、と家に入ってしまった。
「美波さん……?」
 いつもなら元気よく声をかけてくれるのにどうしたのだろう。
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