光のもとでⅠ
 立ち止まっていると、
「翠葉が気にすることじゃないよ」
 と、蒼兄に背を押された。
 蒼兄は何があったのかを知っているのだろうか。
「私、ちょっと行ってくるわ」
 お母さんは私たちに愛想笑いをして美波さんの家へと向かって歩きだした。
「ほらっ、リィ、中に入ろうっ! 栞さんが軽食用意してくれてるって!」
 唯兄に背中を押され、久しぶりのゲストルームへと足を踏み入れた。
「おかえり」
 玄関で出迎えてくれたのは静さんだった。
「静さん、あの、またお世話になりますっ」
 勢いよく頭を下げると、後ろからどつかれた。
「痛っ……」
 どつかれたことよりも、その勢いで玄関マットに膝をついたことのほうが痛かった。
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