光のもとでⅠ
 一階のロータリーではお父さんが車に乗って待っていてくれる。
「お父さん、学校はすぐそこだよ?」
「でも、この暑い中を歩かせるのはなぁ……。それに、父さんは午後には現場に戻らなくちゃいけないし、このくらいはさせてほしい」
 そう言われてしまうと何も言えなくなる。
 昇降口の前で降ろしてもらうと、ちょうどツカサが部室棟からこちらに向かって歩いてくるところだった。
 蒼兄は軽く手を上げて挨拶を交わし、「じゃ、俺は行くから」と大学へつながる通路を歩き始めた。
 その背中を見て思う。
 こうやって別々に行動することが増えて、いずれは蒼兄と違う道を歩くことになるのだろう、と。
「体調は?」
 昇降口にたどり着いたツカサは開口一番にそう口にした。
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