光のもとでⅠ
 私は高等部門しか知らないけれど、それぞれ大学門、中等部門、あとは幼稚部と初等部の門が一緒になっていて、四方から学園敷地内に入ることができるのだ。
「七倉……頼むから、それ、今の季節は水分持ってなかったらやらないで……」
 佐野くんが頭を抱えてしゃがみこんだ。
「あははっ! 当たり前だよー! 安心して? そこまで無謀じゃないから。洋菓子のときしか藤山大回りコースはやらないの。たいていは和菓子だから、高等部門から中等部門へ抜けるコースで四十分から一時間コースだよ」
 香乃子ちゃんは佐野くんのとなりにしゃがみこんで、肩をポンと叩いた。
 赤いフレームのメガネがキラと光る。
 そういえば、香乃子ちゃんはうちのクラス唯一のメガネ女子だ。
 訊けば、
「異物を目に入れるのがちょっと耐えられなくて……」
 という理由でコンタクトを断固拒否しているのだという。
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