光のもとでⅠ
 図書館でデート――思い当たることはひとつ。家庭教師、だ。
 夏休み最後に宿題を教えてもらう際、「このくらいならまだ教えられる」とツカサがもらした。
 その言葉が何を意味するのかと尋ねたら、珍しくグチグチグチグチとひとりの女の子のことを愚痴った。
 前の日に教えたものを翌日には忘れている最悪な頭の持ち主だとか、宿題もやらなければ予習復習もしてこない、教わる姿勢が全く見えない云々――。
 どうやら、おうちの関係で蔑ろにはできない女の子の家庭教師を期間限定ですることになった、とそんな話だったと思う。
「でも、確かめた人なんていないし……。噂、すごく広まっているし……」
 と、左端の先輩が言う。
「噂をいちいち確認しに来られるの迷惑。でも……何をどう思われてもかまわないけど、アレだけは噂で勘違いされるのも不愉快だ」
 そう言うと、ツカサはスタスタと歩くことを再開した。
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