光のもとでⅠ
 なんだかよくわからない会話をしながら栞さんの家に入る。
 いつもと同じ、玄関を入ってすぐ左の部屋に入ると、ベッドに腰を掛けるところまで支えていてくれた。
「司先輩、ありがとうございます」
「……翠、俺も医者になったら翠の味方になれるのか?」
「……え? いつも、今もこんなに助けてくれているのに……」
 ベッドサイドで膝をついている先輩の目が、どうしてか悲しそうに見えた。
「先輩……?」
「今もちゃんと味方だってわかっているのか?」
「……わかってます」
 なんの答えを求められているんだろう。
 会話の要点を得ることができない感じ。
 ものすごく掴みどころのない会話をしている気分だった。
「何度も言ってるけど、俺は何があっても離れないから。それだけはちゃんと覚えていてほしい」
 立ち上がってすぐ、「薬は?」と訊かれる。
「あ、寝る前のお薬飲まなくちゃ……」
「水持ってくる」
 と、すぐに部屋を出ていった。
 どうして――どうして先輩があんなにつらそうな顔をするんだろう。
 それがわからなくて、どんな言葉を口にしたら楽にしてあげられるのか、安心してもらえるのかがわからなくて、少し困った。
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