光のもとでⅠ
 ただ、やっぱり短期間とはいえ、慣れがあるのだろう。
 今朝、唯兄は帰ってくるなり自分の部屋へ吸い込まれるようにしていなくなった。
「翠葉は少し休んだら?」
 お弁当箱をキッチンへ出しにいくと、そう声をかけられた。
「うん。……お母さん、私、夕飯はきっとほとんど食べられないから、私の分は少なくしてね?」
「わかってるわ。でも、少しは口にしなさいよ?」
「うん。じゃないとお薬飲めないものね」
 もう薬の効果は切れている。
 たぶん、ご飯を食べなくちゃとかそういう話ではなく、戻さないようにしなくちゃ。
 そんな感じ。
「明日、学校行けるかな」
「つらいなら休みなさい。戻すのは体力を使うし、何よりもそんなに冷や汗をかいてる状態じゃ授業を受けるのは無理でしょう?」
 そう言って額の汗を拭われた。
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