光のもとでⅠ
 その週の水曜日から茜先輩によるボイストレーニングが始まった。
 立って歌うときの重心のかけ方から発声のあれこれ。難しいことをたくさん教わったけれど、頭に詰め込んだところで整理はできていない。
 自分に与えられた曲は一曲とかそんなかわいいものではなく、複数曲あったのだ。
 もっと詳しく言うなら六曲もある。
 その曲数に愕然としていると、ツカサに髪の毛を引っ張られた。
「不公平だ……」
 一言だけひどくどすのきいた声と目で愚痴を言われる。
 ツカサの曲数を数えてみたら八曲もあった。
 茜先輩はコーラス部のソロもあるから、ということで、姫として歌うものは五曲らしい。
 私以外の姫と王子、茜先輩とツカサからしてみたら、私の曲数が一番少ないわけで、文句を言うに言えなくなってしまう。
 そして、結局ツカサは悪態をついている。
 人って、悪態をつくときには必ず姿勢が崩れるのね……。
 そんな発見をした。
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