光のもとでⅠ
「で、何がどうしてデュエットがあるのか知りたいんですが……」
 ツカサがむすっとして茜先輩に訊けば、
「リクエストがあったからに決まってるでしょ?」
 と一言で片付けられる。
「私にも翠葉ちゃんとのデュエットリクエストがあったから一緒に歌うし」
 茜先輩にはツカサも歯向かえないのか、それとも、この行事におけるリクエストにそれほどの威力があるのか。
 苛立つツカサを見て、得たいの知れない大きな行事と認識する。
 私はまだツカサが何を歌うのか知らないし、茜先輩が何を歌うのかも知らない。
 一方、茜先輩は私たちの曲目を知っているけれど、ツカサも私が何を歌うのかは知らされてはいなかった。
 互いに知っているのはデュエットで歌う曲のみ。
 そのほかだと、ツカサの歌う歌でピアノ伴奏に入る曲目だけは知らされていた。
 しばらくの間は曲を耳で覚えて歌詞を頭に叩き込む作業。
 もう、楽しんで聴くとかそういうレベルじゃない。
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