光のもとでⅠ
「それ、『ある』って言わないし……」
「そうだね」
 私は苦笑を返した。
 でもね、河野くん……見つからないよりは見つかったほうがいいんだよ。
「一度、体育の授業中に制服のスカーフを切られてしまったことがあって、あれはちょっと堪えたな。制服本体だったらどうやっても親に隠せなかったけど、スカーフだったから、両親に内緒で新しいのを買うことができたっけ……」
「ほかには?」
 河野くんは勢いをなくし、少し遠慮気味に訊いてきた。
「あとは噂と無視、かな。グループに入れてもらえない以前に口をきいてもらえなかったの」
 無視されるのが一番きつかった……。
「悪い、つらいこと言わせて……」
「ううん、大丈夫だよ。……今までは私の何が気に入らなくてそういうことをされているのかがわからなかったんだけど、さっきの先輩は面と向かって言ってくれたから。こういうふうに何が嫌なのか言ってくれたら対処法が見つけられるかなって。そう思うと新鮮だった」
「……御園生ちゃんってほんっとに思考回路がちょっと変~……」
 河野くんはうな垂れたけれど、すぐに体勢を立て直して右手の人差し指を立てた。
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