光のもとでⅠ
 顔を上げると、私の後ろを見ていた理美ちゃんの表情が硬いものとなる。
 でも、それも一瞬のことですぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
「ううん、なんでもない。歩けそう? あっちに席が取ってあるんだけど」
 支えてもらって立ち上がり、観覧席まで余所見をせず真っ直ぐ歩いた。
 観覧席に着けば、試合が終わって応援に駆けつけているクラスメイトに囲まれる。
 周りにクラスメイトがいるだけでほっとした。
 河野くん、本当だね……。
 うちのクラスの人の手は、誰の手であっても躊躇しなくていいのかもしれない。
 ここは――クラスメイトがいるところは、いつしか私のホームグラウンドになっていた。
 今、学校で噂が流れていても、私が私でいられるのはクラスメイトがいるからだ。
 噂で私を判断しないでくれる人がいる。
 だから、私は学校を怖いとは思わない。
 中学のときとは違う。
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