光のもとでⅠ
 すごく恥ずかしい思いをした気がするけれど、それが何によるものなのかは思いだせなかった。
 思い出せそうで思い出せない。
 最近はそんなことがあちらこちらに転がっていて、ひどくもどかしい気分。
 そんなとき、コート内にいるツカサと目が合った。
 ツカサには珍しく首を傾げる仕草。
 何……?
 じっとツカサを見ていると、ツカサは手もとを指した。
「……あ、薬?」
 すぐにそれを飲み、「大丈夫」と少し大きめに口を動かした。
 声は発しなくてもツカサは唇を読んでくれる。
 そして、夏休み中に培われた私の「大丈夫」信用度により、「ならいい」といった顔をでこちらに背を向けた。
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