光のもとでⅠ
「……呆れた」
 桃華さんは携帯を手に持つと、
「佐野? 桜林館に戻ってOKよ。翠葉はこっちにいる。集計の最終チェックまで終わってて、残りは準決と決勝戦の集計のみですって。――そう、じゃあとでね」
 携帯を切ると、再びきれいな顔がこちらを向いた。
「一学期なんて決勝戦が始まるギリギリまでみんな集計に追われていたのよ?」
 そう言って私の隣に座ると、スポーツドリンクをごくごくと飲んだ。
「いったいどれだけほかを手伝ったの?」
「ん? 適当に……。山積みになっているところから順番に手伝っていっただけ。……なんていうか、サッカーの試合を見に行こうとしたら、ツカサに仕事を振られて、それを片付けていたらうちのクラスのサッカー見にいけなくなっちゃったの……」
「なるほどね……。翠葉、陸上競技大会のときに熱射病になってるからよ。あの男、翠葉を外に出したくなかったんでしょ。で、その時間に翠葉がやらされた集計のおかげでほかのクラスが楽をできたってところね。相変わらず人遣いの粗い……」
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