光のもとでⅠ
相手は秋斗さんかもしれない。
「――え? 本当ですか? それはもう、助かりますが……。わかりました。自宅に戻ったらデータ転送する前に電話します。――はい。――はい。了解です。――え? あぁ、ちょっと待ってください」
携帯を耳から離して、
「秋斗先輩が代わってほしいって。……どうする?」
「あ……お礼、言いたいの」
「お礼?」
「昨日、お昼にアンダンテのシュークリームを買ってきてくれて……」
「じゃ、出る?」
「うん」
渡された携帯を耳に当てる。
「……翠葉です」
『元気のない声だね』
秋斗さんと電話で話すのは久しぶりな気がした。
じわりと心に何かが広がる。
「少し、つらくて……」
『君は嘘つきだね。絶対に少しじゃないでしょう?』
「……あの、昨日、お昼にシュークリームありがとうございました。とても美味しかったです」
『食べられたなら良かった』
何も変わらない優しい声が耳に届く。
『今日、引越しだってね』
「はい。しばらくゲストルームに間借りさせていただくことになりました」
『じゃ、会う機会がたくさんあるね。今日、夕方にはそこへ若槻を届けることになっているから』
「えっ!? 秋斗さんも一緒なんですか?」
『ダメ?』
「あ、いえ……だめとか、そういうのではなくて――」
『あとで会えるの楽しみにしてる』
「蒼兄に、代わりますね」
そう言って蒼兄に携帯を渡した。
「――え? 本当ですか? それはもう、助かりますが……。わかりました。自宅に戻ったらデータ転送する前に電話します。――はい。――はい。了解です。――え? あぁ、ちょっと待ってください」
携帯を耳から離して、
「秋斗先輩が代わってほしいって。……どうする?」
「あ……お礼、言いたいの」
「お礼?」
「昨日、お昼にアンダンテのシュークリームを買ってきてくれて……」
「じゃ、出る?」
「うん」
渡された携帯を耳に当てる。
「……翠葉です」
『元気のない声だね』
秋斗さんと電話で話すのは久しぶりな気がした。
じわりと心に何かが広がる。
「少し、つらくて……」
『君は嘘つきだね。絶対に少しじゃないでしょう?』
「……あの、昨日、お昼にシュークリームありがとうございました。とても美味しかったです」
『食べられたなら良かった』
何も変わらない優しい声が耳に届く。
『今日、引越しだってね』
「はい。しばらくゲストルームに間借りさせていただくことになりました」
『じゃ、会う機会がたくさんあるね。今日、夕方にはそこへ若槻を届けることになっているから』
「えっ!? 秋斗さんも一緒なんですか?」
『ダメ?』
「あ、いえ……だめとか、そういうのではなくて――」
『あとで会えるの楽しみにしてる』
「蒼兄に、代わりますね」
そう言って蒼兄に携帯を渡した。