光のもとでⅠ
 そこへ栞さんが戻ってきた。
「体を締め付けるようなものは避けたのだけど」
 と、水色のロングワンピースをハンガーにかけて持ってきてくれた。
 サラッとしていて手触りのいい涼しげなワンピース。
 広めのスクエアネックにノースリーブのワンピースで、ウエスト部分は細いリボンはベルトループに通っていた。
「ワンピースなら大丈夫だと思って」
 電話を切った蒼兄が、
「俺、着替えが終わるまで外に出てるから」
 と、部屋を出た。
 私は心臓と頭の位置がずれないように四つんばいの状態になり、栞さんに手伝ってもらって着替えを済ませた。
「あ、そうだ。美波さんに連絡入れなくちゃ」
 栞さんは思い出したように携帯を取り出す。
「美波、さん?」
「えぇ、ここのコンシェルジュ統括者、崎本さんの奥さんよ」
 にこりと笑って電話をかける。
「栞です。ご無沙汰してますがお元気ですか? ――えぇ、そうなんです。今から私の車ともう一台お願いできますか? ――えぇ、自宅です。――お願いします」
 短いやり取りをして切る。
「蒼くん、もういいわよ」
 廊下に声をかけると蒼兄が戻ってきた。その数分後、インターホンが鳴る。
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