光のもとでⅠ
 不思議に思って秋斗さんを見上げると、
「何を今さら」
 と、唯兄が秋斗さんの後ろへ回って背中をバシッと叩いた。
 聞くからに痛そうな音だったけど、秋斗さんは一言ももらなさなかった。

 言われたとおりに手洗いうがいを済ませ、ルームウェアに着替えてリビングに行くと、テーブルにはすでに夕飯の準備が整っていた。
 秋斗さんは栞さんに旅行の話をしているところ。
「それ、俺も行きたいなぁ……」
 口を挟んだのは唯兄。
「本当っ!? 唯兄も一緒っ!?」
「目の前の上司殿の許可が下りればね」
 唯兄はにこりと笑い、秋斗さんを見やる。
「翠葉ちゃんがそんなに喜んでいたら却下なんてできないだろ」
 秋斗さんは若干むすっとした顔をした。
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