光のもとでⅠ
 蒼兄が秋斗さんに頭を下げると、そのあとは私の側にやってきた。
「ごめんな、今日迎えに行けなくて」
 こういうとき、ものすごく申し訳なさそうな顔をするからつらくなる。
 たとえば、「ううん、大丈夫」と答えたとして――自分ひとりでどうにかできたわけではない。
 秋斗さんやツカサ、湊先生たちの助けがあったから病院へ行けて帰ってこられたのだ。
 だから、なんて答えたらいいのかもわからなくて困る。
「じゃ、碧さんたちに連絡しましょう」
 栞さんがその場の空気を変えるように声を発した。
「栞ちゃん、それ、俺がやる」
 秋斗さんが立ち上がり、携帯を手にひとりベランダへ出た。
 外は真っ暗で、明るい室内にいる私たちからは秋斗さんがどんな表情をしているのかは見えないけれど、数分もするとリビングへ戻ってきた。
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