光のもとでⅠ
 本当は何もせずに休んだほうがいいのはわかっているのだけど、何かしていたかった。
 何もしていないことが少し怖かった。

 ツカサの伴奏をする楽譜をさらってピアノを弾いていた。
 時刻はもう九時半を回っている。けれども、この部屋は時間を気にせずピアノを弾くことが許されるつくりになっている。
 そんな特殊装備を搭載しているゲストルームに救われる。
 スピッツの「優しくなりたいな」。
 ピアノの伴奏事体も好きだけど、歌詞も好き。
 私も優しくなりたい。難しいけど……。
 ツカサのことをもっと知りたいと思う。
「もっと」というよりは、「ちゃんと」。
 ツカサが何をどう考えているのか、何をどう思っているのか。
 ちゃんと知りたいと思う。
 そしたら、今日だってあんな顔をさせずに済んだかもしれない――。
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