光のもとでⅠ
 そこは調度品を取り揃えてあるホテル側とは打って変わって「会社」という感じだった。
 長い廊下の脇にはガラスで仕切られた部屋がいくつもあり、パソコンが何台も並んでいる。
 向かい合わせにデスクが設置されている部屋もあれば、ひとつひとつ間仕切りがしてある部屋もある。
 ロビーには優雅なクラシック曲が流れていたのに対し、こちらは戦場、といった感じだ。
 ホテル業務がどんなものかは知らないけれど、表の従業員だけで成り立っているわけではないということがわかる場所だった。
「会社」だ――。
 唾を飲み込むとごくりと音がした。
「こういうとこ来るの初めて?」
「うん……うちは自営業だから――」
「そっか、学校の社会科見学とかは?」
「小学校のときに給食のパン工場を見にいったことがあるだけ」
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