光のもとでⅠ
「翠葉ちゃんは司から離れようなんて思ったことないよね?」
 どうしてかな。
 その問いには、「そうであって欲しい」と望まれているような気がした。
 でも、事実そんなことを考えたことはない。むしろ――。
「離れるってなんでしょうね……。もし、距離が開くというのなら、それは私から離れるのではなく、ツカサが離れていくのだと思います」
 自分で答えておきながら、心臓が痛いと思う。
「翠葉ちゃん、行っておいで」
 私は茜先輩の小さな手に押されて一歩を踏み出した。

 数歩歩いてキッチンの外。あと一歩でキッチン。
 そんな場所に立っていると、
「カップ、どれ使うの?」
 キッチンの中からツカサに声をかけられた。
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