光のもとでⅠ
「ふたりとも、今日はちゃんと歌詞に気持ちがのってたね?」
「……歌詞、いつもは読むだけで想像が追いつかなかったんです」
「今日は想像が追いついたの?」
 茜先輩に覗き込まれ、クスリと笑う。
「はい、少しだけ……。一緒に歌うのがツカサだからわかったのかな」
「そう……良かったね」
「はい」
 茜先輩はキッチンを背にしたソファに座り、ツカサは私と同じラグの上。
「ほかの歌詞も同じだよ。歌は気持ちをこめて歌詞を口にすると想いが伝わるの」
 そう教えてくれた茜先輩は少し寂しそうな表情を見せた。
 どうしてだろう、とは思うものの、どうしてか訊いてはいけない気がした。
 休憩のあとはツカサの歌う「優しくなりたいな」の練習。
 この曲は私がピアノでツカサがボーカル。
 後日吹奏楽部からボンゴとフルート、スネアも加わるそうで、それまでにふたりでの練習をきっちりするように、と言われた。
< 3,403 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop