光のもとでⅠ
「翠葉は先輩の車に乗りな」
「えっ!?」
 振り向き様、蒼兄に言われて慌ててしまう。
「嫌?」
 隣に並ぶ秋斗さんに訊かれて少し困る。
「嫌、というわけではなくて……。少し、いえ、すごく緊張するだけです」
 すると、秋斗さんとは反対側に唯兄が並んだ。
「リィ、大丈夫だよ。サービスエリアで一度合流するし、それまで一時間ちょいだから。我慢我慢っ! いくら秋斗さんでも高速走りながらは悪さできないから安心しな」
 悪さ……?
「若槻くん……あとで上司の部屋まで来るように。社会人としての常識を――」
「若槻唯はただいま二日間の休暇をいただいております」
 唯兄は単調に答えた。
 そんなやり取りがおかしてく自然と笑いがこみあげてくる。
 まだ言い足りない感じの秋斗さんと唯兄から離れ、少し前を歩く蒼兄に駆け寄った。
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