光のもとでⅠ
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。蒼樹たちは飲み物を買いに行っただけだから」
 秋斗さんがクスクスと笑いながら教えてくれる。
 そうなんだ、とほっとしてからは、また栞さんと昇さんに視線を戻した。
 周りの刺さるような視線を感じるくらいなら、昇さんたちを見ているほうがいい。
「あんなふうに翠葉ちゃんと仲良くなりたいな」
「え……?」
「下心は多少なりともありますよ? でも、本気だから」
 秋斗さんは穏やかに笑った。
「俺はあの日、このドライブに行かなかったら翠葉ちゃんを好きになることはなかったかもしれない。……いや、どうかな――。たまたま自分の気持ちに気づいたのがあの日だっただけで、森林浴に行ってなくても君に惹かれたのかな」
 私に話しているようで、どこか自分自身に問いかけているような言葉だった。
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