光のもとでⅠ

33

 携帯を持った手は重力に逆らうことなく膝に落下した。
 鈍い痛みに視線を向けたとき、ディスプレイに水滴がはじけて自分が泣いていたことに気づく。
 少し離れた場所でドアを開閉する音がし、携帯はスカートで、涙は袖で拭った。
 ぎゅむ、ぎゅむ、ぎゅむ、ぎゅむ――足音が近づいてくる。
 もっと寒くなり冬が近づけば、シャクシャク、と枯葉を踏んだときの小気味いい音になるだろう。
 今はまだ乾燥には程遠い、湿り気を帯びた生きた葉たちのため、湿度を含んだ音になる。
 視界に秋斗さんの靴が入った。
「翠葉ちゃん、ここは日陰。冷えるよ」
 そう言って、肩に秋斗さんのジャケットをかけられる。
 ふわりとほのかな香りに包まれた。
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