光のもとでⅠ
「ありがとうございます……。日陰は本当に寒いですね」
 声を発して気づく。
 自分のそれが見事に鼻にかかった涙声であることに。
 笑みを添えて顔を上げたけれど、うまく笑えた気はしなくて、再度視線を手もとに落としてしまった。
「手がかじかんで、うまくシャッターが切れないみたいです。だから、今日は諦めようかな……」
 そう言った瞬間、ジャケットの上から抱きしめられた。
 一瞬、身を引いてしまいそうになったけど、より強く感じた香りを知っている気がして、抱かれるままに額を秋斗さんの胸にくっつけた。
 この香りは知ってる――。
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