光のもとでⅠ
 声もまだいつもどおりではなく、目だって赤くて情けない状態に違いない。
「じゃ、俺も一緒に足湯に浸かろうかな」
 秋斗さんは私の隣に腰掛け、靴下を脱いでジーパンの裾をまくり始めた。
「そろそろかな」
 言うと、またしても私を抱え上げてそのままバスルームへと連れていかれる。
 この香りはどこで嗅いだことがある匂いなのだろう。
「こういうの、だいぶ慣れたのかな?」
「え……?」
「前は、こんなにおとなしく抱き上げられてはくれなかったんだよ」
「っ……今だって大丈夫なわけじゃないですっ。でも、秋斗さん、あたたかくて――」
「……くっ、俺で暖が取れるならいくらでも?」
 そんなふうに甘い笑顔を向けられると困ってしまう。
 心臓が駆け足を始めるから、困る……。
 秋斗さんがあたたかくて、なんだか懐かしい香りがしたから――。
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