光のもとでⅠ
 そこから徐々に温度を上げて四十度を超えた頃、
「よし、じゃ、スカートだけ持っててね?」
「え……?」
 次の瞬間には両脇に手を入れられふわりと身体が浮いた。
 湯船に入れられ、その縁に座らされる。
 秋斗さんも同じように湯船に入っては縁に腰を下ろした。
「あったかいね」
 そう言って笑う表情が優しくて――止まったはずの涙があふれ出す。
 あたたかいのと優しさが重なって相乗効果。
 困る、泣きたくないのに――。
 こんなに情けない自分は見せたくないのに。
 人に心配をかけるような自分は嫌いなのに。
「はい」と差し出されたのはフェイスタオルをお湯で濡らしたものだった。
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