光のもとでⅠ
「それがどうしてうちのコンシェルジュになったの?」
当たり前に浮かぶ疑問を栞さんが尋ねると、
「グリーンのリース会社がウィステリアホテルで仕事してまして、そのときにオーナーに捕獲されました。自分、とりあえず植物に携われるのなら職場はどこでもかまわなかったので……。そしたらホテルでも姉にばったり出くわしまして、俺を雇うならこのマンションにしてくださいって、姉がオーナーに直談判したみたいです」
「なんでまた」
蒼兄が訊くと、
「お姉、娘がいるんだよ。今年初等部に上がったばかりなんだけど。シングルマザーだから、子どもを預ける場所が欲しかったみたいでさ」
「なるほどね」
そこで栞さんが手をポンと叩いた。
「納得。その直談判の対価が里実さんの陶芸作品なのね。彼女の作品がうちの系列にしか出回らない理由がわかったわ」
途中から話の内容がわからなくなってしまったけど、"お姉"と"姉"を蒼兄と栞さんで使い分ける高崎さんはすごい。
蒼兄は呆れた顔のまま、
「それで葵は樹木師になれたのか?」
「まだ樹木師に関しては見習い中。あれ、実務経験が七年以上ないとダメでさ」
引越し業者が来るまでの三十分は、こんな話をしながらみんなでお茶を飲んで過ごした。
グリーンコーディネーターか……。
華道よりはこっちのほうが好きかな。
より自然に近い状態を作り、周りとの調和やアクセントを見出す職業。
けれど、何よりも植物の状態を一番に考えていて、植物を助ける立場にいる人たち。
きっと、ブライトネスチャペル周辺の森林もこういう人たちが管理しているのだろう。
だからこそ、人の手が入りすぎていない自然と、歩きやすさを併せ持つ場所を維持できているに違いない。
職業は、普段目にすることがなくても色んなところで密接に関わっているものなのね。
当たり前に浮かぶ疑問を栞さんが尋ねると、
「グリーンのリース会社がウィステリアホテルで仕事してまして、そのときにオーナーに捕獲されました。自分、とりあえず植物に携われるのなら職場はどこでもかまわなかったので……。そしたらホテルでも姉にばったり出くわしまして、俺を雇うならこのマンションにしてくださいって、姉がオーナーに直談判したみたいです」
「なんでまた」
蒼兄が訊くと、
「お姉、娘がいるんだよ。今年初等部に上がったばかりなんだけど。シングルマザーだから、子どもを預ける場所が欲しかったみたいでさ」
「なるほどね」
そこで栞さんが手をポンと叩いた。
「納得。その直談判の対価が里実さんの陶芸作品なのね。彼女の作品がうちの系列にしか出回らない理由がわかったわ」
途中から話の内容がわからなくなってしまったけど、"お姉"と"姉"を蒼兄と栞さんで使い分ける高崎さんはすごい。
蒼兄は呆れた顔のまま、
「それで葵は樹木師になれたのか?」
「まだ樹木師に関しては見習い中。あれ、実務経験が七年以上ないとダメでさ」
引越し業者が来るまでの三十分は、こんな話をしながらみんなでお茶を飲んで過ごした。
グリーンコーディネーターか……。
華道よりはこっちのほうが好きかな。
より自然に近い状態を作り、周りとの調和やアクセントを見出す職業。
けれど、何よりも植物の状態を一番に考えていて、植物を助ける立場にいる人たち。
きっと、ブライトネスチャペル周辺の森林もこういう人たちが管理しているのだろう。
だからこそ、人の手が入りすぎていない自然と、歩きやすさを併せ持つ場所を維持できているに違いない。
職業は、普段目にすることがなくても色んなところで密接に関わっているものなのね。