光のもとでⅠ
 本館に戻る道を歩いていると、森を抜けた辺りがオレンジ色の光に照らされていた。
 柔らかな光はしだいにはっきりとした形になった。
 キャンドルの炎――。
「うわぁ……きれい」
「こういうのはウィステリアホテルの十八番だよ」
 唯兄の手が伸びてきて手をつないだ。
「ほらほら、中を歩こうよっ!」
 手を顔の高さまで持ち上げられたとき、頭の中に会話がよぎった。

 ――「じゃぁ、また連れてこないとね」
 ――「本当にっ!?」
 ――「いつでも連れて来るよ」
 ――「秋斗さん、大好きっ! ……秋斗さん?」
 ――「……ごめん、ちょっと面食らった」
 ――「え?」
 ――「翠葉ちゃん、めったにそういうこと言わないし、こんなこともしないし」
 ――「……今日は特別なんです」
 ――「それでも嬉しいけどね」
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