光のもとでⅠ
 秋斗さんにエスコートされて席に着くと、目の前には蒼兄、左隣には栞さん。右隣には唯兄。
 栞さんの正面には昇さんが座り、唯兄の正面には秋斗さんが座った。
 料理はどれも美味しかったと思う。
 でも、あまり記憶にはない。
 ツカサにも栞さんにも考えすぎないように、と言われたけれど、それは存外難しかった。
 考えないようにすればするほど、意識はそこへ集中してしまうのだ。
 全部食べることはできたけど、食べることには集中できなかった。
 その場の会話も、受け答えも覚えていない。
 上の空とはこういうことをいうのだろう。
 作り手の人に対してものすごく申し訳ない時間を過ごしてしまった。
「ご馳走様」よりも、「ごめんなさい」――。
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