光のもとでⅠ
 部屋で着替えをしたときに、髪の毛も解いた。
 髪飾りを落とすのが怖くて。
 いただいた陶器の入れ物にそれを戻し、結ったあとがついてしまった髪の毛をひとつに束ね、左サイドで緩く一本の三つ編みにした。
 ゴムにはツカサからもらったとんぼ玉が通してある。
 気づけばとんぼ玉は私のお守りみたいな存在になっていた。
 このとんぼ玉に触れて一から十までのカウントを思い出すと、気持ちを落ち着かせることができる。
「じゃ、行ってくるね」
 部屋を出て秋斗さんの待つ噴水広場まで歩きながら考える。
 足がかりが少しずつ増えているのは、秋斗さんが以前私に言ったことのある言葉を使ってくれているから……?
 ふと、そんなことを思う。
「さっきのワンピースもかわいかったけど、そのワンピースもかわいいね」
 話しかけられて、噴水広場までたどり着いていたことに気づく。
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