光のもとでⅠ
 昼間は空や紅葉(こうよう)を見てきれいだと思ったけれど、今度は星が見えるんだ、って思ったら躊躇うことなどなかった。
「無防備」とはどこら辺がどのように、なのだろう……。
 答えの出ないことを考えるのはやめ、視界いっぱいに広がる星に意識を戻した。
 都会のネオンが届かない場所から見る星は、今まで見たことがないほどに数が多くて驚いた。
 幸倉峠から見る星空もとてもきれいだけれど、ここまでたくさんの星が見えることはない。
 キラキラ輝く星たちは人間を干渉しない。
 人間の作り出す照明とは在り方が違う。
 人工的な照明は、手元を照らす、足元を照らす、空間を照らす――。
 何かしらの用途を担っている。
 その光のせいで星が見えなくなることはあっても、星の光で何かが見えなくなることはない。
 そんな対極にあるふたつだけれど、光は光……。
 明かりを見るとほっとするのは人間の性かな。
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