光のもとでⅠ
 外は鳥の声もせずにしんとしていて、明かりといえば月明かりと星の瞬きくらいなものなのに。
 この部屋には話し声と笑い声、それからケトルのシュンシュンいう音と、時折ストーブからパキ、という音が聞こえる。
「これ、いつもつけてるよね?」
 秋斗さんの手が伸びてきてとんぼ玉をとらえた。
「これ、ツカサがインターハイに行ったときにお土産で買ってきてくれたんです」
 秋斗さんは急に黙りこくってしまい、さらにはとんぼ玉のゴムをスルリ、と取られた。
「秋斗さんっ!?」
「司にもらったものだからずっと身につけていたの?」
 手にとんぼ玉を持ったまま訊かれる。
 けれども、言われたことの意味がよくわからなかった。
「若槻が蒼樹からもらったものだと思ってた。もしくは、君がもともと持っていたものだと――」
「……ツカサからもらったものじゃだめなんですか?」
 そう言われている気がした。
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