光のもとでⅠ
「いけなくはないけれど、嫉妬はする、かな……。これは君にとって何?」
「……持ってると安心するもの」
「……あとで返すから、だから今だけは外していてくれない?」
 身体を起こし、カップを両手で持って秋斗さんに背を向ける。
「秋斗さんのその顔は反則です。……そんな顔されたら嫌だなんて言えません。あとでちゃんと返してくださいね?」
 あんな切なそうな顔をされたら嫌なんて言えない。
 胸が締め付けられる気がした。
 だから、少し落ち着きたくてお茶を手にしたのだ。
 あとで返してくれるというのだから不安に思うことはない。
 ただ、私が持っていないだけで、この部屋にはある。
 この空間にはある。所在は明らかだ。
 なくしたとかそういうのじゃないから、大丈夫――。
 カップを口につけたとき、ベッドがギシリと音を立て、次の瞬間には後ろから抱きすくめられた。
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