光のもとでⅠ
 本館の部屋に戻ると、
「あ、そうだ……」
 と、蒼兄がライターを手に取った。
 首を傾げる私の前で、キャンドルに次々と火を灯していく。
 カーテンが閉まったままの部屋はまだ薄暗く、その中でゆらゆらと揺れる炎はとても幻想的な空間を作り出した。
 蒼兄においでおいでとされたので、ソファまで行くと、そこへ座らされる。
 隣に蒼兄が座ると、「前をみてごらん」と言われた。
 視線を壁に向けると、私と蒼兄の間にハートの影が浮かび上がっていた。
 後ろを見ると、テーブルの上においてある花瓶にいけてある葉っぱの影だった。
 ちょうどふたりの間にできるハート。
 小さいハートがふたりの影の間でゆらゆらと揺れる。
 まるでハートが彷徨っているみたい。
「ほかに飾られている花たちにも色んなモチーフがあるみたいだよ」
 そんなことを教えられたら見て回らないわけにはいかない。
 ひとつひとつじっくりと見て堪能した。
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