光のもとでⅠ
「私は……写真のお仕事なんてしたことがないんです。お仕事、と意識しただけで写真が撮れなくなってしまいました。どうしましょう……」
 私よりも少しだけ背の高い木田さんはとても優しい笑みを浮かべた。
「誰もが通る道です。アルバイトでも正社員でも。ですが、立ち止まったままでは前へ進めません」
「……どうしたら先へ進めますか?」
「そうですね……とりあえずは歩くことではないでしょうか?」
「歩くこと……? どうしてもその一歩が踏み出せなかったら?」
「人に背中を押してもらって、無理矢理にでも進む方法もあります。ですが、踏み出せるまで時を待つ方法もあります」
 待つ――。
 それはどのくらいの期間?
 どのくらいまでなら待ってもらえるのだろう……。
「静様からうかがったお話ですと、まだたんまりとストックがあるのだとか?」
 それは私が静さんに見せたアルバムのこと?
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