光のもとでⅠ
「……? 名刺を渡したことに対してのお礼ではないようですが?」
「実は……私、記憶が少しだけないんです。以前、ここへ来た記憶もなくて……」
「……申し訳ございません。先日静様からうかがって存じておりました」
 あ……だからステンドグラスの光のことを教えてくれたんだ。
「今、名刺をいただいたことで、ほかの人に名刺をいただいたことを思いだせました」
「さようですか。何かひとつでもお役に立てたようで良かったです」
 そこへ、
「リィ、ご飯行こうっ!」
 唯兄の声がチャペルに響いた。
 振り返ると、少しだけ開いていた扉から唯兄の顔がひょっこりと覗いていた。
「あ、木田総支配人、おはようございます」
「おはようございます。昨夜は良く眠れましたか?」
「はい、ぐっすりと! ステラハウス、雪が降る前にシーズンオフって本当ですか?」
「えぇ、今はまだ試作段階ですので一度取り壊し、ご利用いただいたお客様のご要望を再度熟考してから、本格的に離宮扱いで建築する予定です」
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