光のもとでⅠ
「すっごくわかりづらくて紆余曲解しそうになること多々なんだけど、でもこの人たち俺のことかなりちゃんと考えててくれるみたいだから。このままいるわけにもいかないんだよね」
 と、嫌そうに話すのに感謝しているのがきちんと伝わってくる。
「……かしこまりました。でも、その"お姫さん"はどうにかしてください」
「どうにか、ねぇ……」
 若槻さんは宙を見ながら首を傾げる。
「スゥ、よりはリィ、だよなぁ……」
「はい?」
「うん、リィって呼んでもいい?」
「あの、それどこから出てきたんでしょう?」
「リメラルドの超簡易バージョン」
 それで納得した。"スゥ"は翠葉の超簡易バージョンなのだろう。どちらにしても、そうそう思いつく呼び名ではない気がする。
「ダメ?」
 かわいい顔で訊かれると困る。男の人なのにかわいいってなんだろう……。
 初めての感覚に心がくすぐったくなる。
「私、最近めっきりと呼び名が増えてまして、反応できるか怪しい限りなんですけれども、努力はしてみます」
 答えると、若槻さんとふたりでクスリと笑った。
 なんとなく内緒話をしている気分。
「若槻、翠葉ちゃんに手ぇ出したら締めるよ?」
 秋斗さんがにこりと笑みを浮かべる。と、
「どっちがですか。こちらも今となっては彼女の兄貴分なんで、秋斗さんがリィに変なことしたら許しませんよ?」
 若槻さんもきれいににこりと笑みを返す。
「……これは思わぬところで味方ゲットかな?」
 言いながら、蒼兄は肩を震わせて笑っていた。
 そんな状況がおかしくてクスクスと笑う。
「翠葉ちゃんまで笑うなんてひどいな」
 言いながらも秋斗さんは笑っていた。
 そうだ……。
 私はこういうふうに話したいと思っていただけなの。
 普通に、みんなで一緒に楽しく話をしたり笑ったり――そういうのを望んでいただけ。
 なんだ、ちゃんとできてる。私、大丈夫だ。
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