光のもとでⅠ
「あ、の……蒼兄、やっぱり――」
その先を言おうとしたら、蒼兄に制された。
「若槻くん、こうやるんだ」
ティースプーンに少しスープを取り、口もとに運ばれる。
そこまでされたら口を開けるしかなくて、口に入れられたスープを飲み込んだ。
「一日にこれ三回だけ?」
「あ、えと……本当に、今だけ……だと思います」
「嘘うそ、疲れてるときや具合の悪いときはたいていこれしか口にしない。ほかにがんばって食べるとしたらアンダンテのタルトくらいだよ」
蒼兄はくつくつと笑いながらすべて白状してしまう。
「蒼兄っ」
「だって本当のことだろ?」
居たたまれない気持ちでいると、
「翠葉、しばらくは兄がふたりいるんだ。おまえのリハビリにもなるよ。人に甘える、頼るってことをもう少ししてごらん」
優しく、諭すような声音で言われた。
強要するのではなく、お互い様だからやってみたらどうかな、って提案された気分。
すると若槻さんが動く。蒼兄を見て、
「じゃ、即ち蒼樹さんは俺のあんちゃんですね」
「若槻くんは二個下だっけ?」
「二十ニです」
「じゃ、そうだな。俺には当分の間は弟がいることになる」
そして、シャツの胸ポケットから四角い紙を取り出すと、「唯」と若槻さんに声をかけた。
「なんかくすぐったいですね。俺のことを唯って下の名前で呼ぶの、今じゃ蔵元さんだけなので」
「……え? お父さんとお母さんは?」
不思議に思って訊くと、
「いないよ」
と、悲しそうな笑みを浮かべて口にした。
そんな若槻さんに、蒼兄は頭をポンポンと叩き、
「じゃ、あとは頼むな」
と、部屋を出ていってしまった。
その先を言おうとしたら、蒼兄に制された。
「若槻くん、こうやるんだ」
ティースプーンに少しスープを取り、口もとに運ばれる。
そこまでされたら口を開けるしかなくて、口に入れられたスープを飲み込んだ。
「一日にこれ三回だけ?」
「あ、えと……本当に、今だけ……だと思います」
「嘘うそ、疲れてるときや具合の悪いときはたいていこれしか口にしない。ほかにがんばって食べるとしたらアンダンテのタルトくらいだよ」
蒼兄はくつくつと笑いながらすべて白状してしまう。
「蒼兄っ」
「だって本当のことだろ?」
居たたまれない気持ちでいると、
「翠葉、しばらくは兄がふたりいるんだ。おまえのリハビリにもなるよ。人に甘える、頼るってことをもう少ししてごらん」
優しく、諭すような声音で言われた。
強要するのではなく、お互い様だからやってみたらどうかな、って提案された気分。
すると若槻さんが動く。蒼兄を見て、
「じゃ、即ち蒼樹さんは俺のあんちゃんですね」
「若槻くんは二個下だっけ?」
「二十ニです」
「じゃ、そうだな。俺には当分の間は弟がいることになる」
そして、シャツの胸ポケットから四角い紙を取り出すと、「唯」と若槻さんに声をかけた。
「なんかくすぐったいですね。俺のことを唯って下の名前で呼ぶの、今じゃ蔵元さんだけなので」
「……え? お父さんとお母さんは?」
不思議に思って訊くと、
「いないよ」
と、悲しそうな笑みを浮かべて口にした。
そんな若槻さんに、蒼兄は頭をポンポンと叩き、
「じゃ、あとは頼むな」
と、部屋を出ていってしまった。