光のもとでⅠ
 優太先輩は隣であうあう言いながら問題を解いている嵐子先輩の勉強を見ながらで、あまり作業が捗らないようだった。
 私がやっている収支報告の確認ならば、途中で作業が中断されても頭の中で考察を邪魔されるようなことはない。
「ツカサ、私、優太先輩と仕事代わってもいい?」
「あ、翠葉ちゃん、それは申し訳ないからいいよ。こっち、かなりハードだし」
「だから、です。算段しながら別のことをするの、男の人は苦手なのでしょう?」
 何かの本に書いてあった。男性の脳と女性の脳は違う、と。
 女の人は同時に複数のことをこなせるけれど、男の人は複数のことを同時進行するのが苦手な生き物だ、と。
「ウェイトがかかっていいならいい」
 ツカサはディスプレイに視線を固定したままこちらに返事をする。
 その際も手は留まることなくショートカットキーを押しては目がくらむような速さでいくつもの画面を交互に表示させ、エクセルに数字を打ち込んでいく。
< 3,589 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop