光のもとでⅠ
「私たちは少し似てますね」
「え?」
「鏡を見ているみたいです。……だって、同じなのでしょう? 言いたくないことを言おうとしたり、したくないことをしようとしたり、やりたいと思っていてもできなかったり――」
 若槻さんは何も言わない。
「若槻さん、私が無理をしなかったら若槻さんも無理をしないでくれますか?」
「どうかな? 五分五分」
 五分五分と言われると、違う言葉が頭に浮かぶ。それは"Give & Take"。
「……若槻さんも"Give & Take"の人ですか?」
「……質問。それ、ほかに誰がいんのかな?」
「蒼兄です」
「……意味わかんないんだけど。基本、兄妹に"Give & Take"も何もないでしょーよ」
 そうなのかもしれないけど――。
「でも、私と蒼兄には必要なんです。……だから、もし若槻さんもそうだとしたら、若槻さんは私と蒼兄の関係に少し似ているかも……」
「じゃ、手始めにお兄ちゃんって呼んでもらえる? なんなら唯兄でもいいけど」
 にこりと笑われ言葉に詰まる。と、
「じゃないと、呼称をお姫さんに戻すけど?」
「若槻さん、それ脅迫……」
「なんとでも」
 だいたいにして、蒼兄以外の人を兄と言われても……。
 すぐには受け入れられないし、甘えろというのも無理な話だ。
「すごい顔。苦虫噛み潰したみたいな」
 と、頬をつつかれた。
「リィは表情がコロコロ変わるな。そんなところはセリに似てる」
 せ、り……?
「あぁ、セリって俺の妹」
 と、少し寂しそうな顔で笑った。
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