光のもとでⅠ
 洗面所で顔を洗ってからすぐに自室へ戻った。
 鏡を前にして、軽く結わえたゴムを解き、毛先から少しずつ髪の毛を梳かす。
 ドレッサーの上には柘植櫛がふたつと陶器の入れ物。
 櫛には桜の彫刻があしらわれており、陶器は白地ベースに青いお花がちりばめられている。
 陶器の蓋をあければふたつの髪飾り……。
「私、ふたりに何かプレゼントしたのかな……」
 そもそもツカサの誕生日はいつだろう?
「あ――」
 完全に忘れいていたけれど、私、秋斗さんの誕生日に会ったのに何もプレゼントしていない。
 入院していたからできなくて当たり前なんだけど、今の今まですっかり忘れていた。
「翠葉?」
 ドアの外から声をかけられる。
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