光のもとでⅠ
「こんなの序の口よ。恋愛の悩みで知恵熱出すわ、勝手に我慢大会し続けてぶっ倒れるわ。あとであんたの携帯にもバイタルチェックの設定するのね」
「あぁ、あれ出来上がってたんだ。年度始めで忙しいってときに何やってるんだか、とは思ってたけど。なんだリィがつけてたんだ」
 と、視線が顔から腕に移る。
 どうやら現物を見たのは初めてのようで、じっくりと観察していた。
「了解。あとで自分のにも入れとく」
 若槻さんは自分の携帯を取り出すと、枕元に置いてあった私の携帯にも手を伸ばす。
「リィ、個人情報もらっていくし、リィの携帯にも俺のデータ入れておくから。あ、湊さん、リィのご飯お願いしてもいいですか? 俺、リィのパソコンの設定済ませちゃいます」
 と、すごい勢いでキーボードを打ち始めた。
 その様子を見て湊先生とふたり唖然とする。
「神の申し子ならぬ、第二の秋斗だわね」
 言いながら、湊先生はスープを口もとへ運んでくれた。
 数分すると不満たっぷりの声がする。
「リィ、このパソコン適当に改良してもいい? 動作遅すぎ。全然タイピングについてこない」
 私の返事を待たず、若槻さんはパソコンを持って部屋を出ていった。
「翠葉の周りには一癖ある人間ばかりが集るわね」
「湊先生、それは違うと思うの」
「何が違うのよ」
「静さんの周りにいる人が、だと思いたいもの」
 言うと、湊先生は一瞬間を置いてからお腹を抱えて笑いだした。
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