光のもとでⅠ
「ごめんね……俺も話を聞いちゃったんだ。ちょうど家を出ようと玄関で靴を履いた直後だったから……」
 空太くんは頭を掻きながら罰の悪い顔をした。
「そのさ……話を聞いちゃって申し訳ないとは思うんだけど、そのうえで俺の意見を言わせてもらってもいい? ――俺、結構ショック。翠葉ちゃんが中学のときにどれだけ嫌な思いしてきたかは知らないけど、少なくともうちのクラスには翠葉ちゃんを仲間はずれにするような人間はいないし、誰もが翠葉ちゃんを好きだと思ってると思う。その気持ちが届いていないのは正直悔しいよ。……だから基本姿勢は藤宮先輩と一緒。俺も戦線布告――そんなことが理由で翠葉ちゃんが必要以上にがんばるんだったら、俺も止める。止めても翠葉ちゃんをひとりにするつもりはないから」
 そう言って手を差し出された。
「学校へ行こう」
「蒼樹、悪い。空太も一緒に車乗せてやって」
 蒼兄ははっとしたように腕時計を見た。
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