光のもとでⅠ
 ぎゅ、とシャーペンを握りしめてから、一度それを置いた。
 姿勢を正し、深く息を吸い込んでから最後まで息を吐き切る。
 そして、頭に響かせるのは一から十までの数。
 声はツカサ――。
『一、二、三、四、五、六、七、八、九、十――』。
 手の震えは止まる。
 大丈夫――今は授業を受けなくちゃ……。
 この学校は授業中に私語が聞こえてくることはないし、クラスのどこかで手紙交換をしている気配もない。
 誰もが授業に集中していて、聞こえてくるのは先生の声と黒板にチョークが当たる音。
 あとは指名された人が席を立つ音や答える声。
 人の視線を気にしなくて済む時間があることにほっとする。
 ……本当は、こんなことに安心してしまう自分をどうにかしなくてはいけないのに。
< 3,644 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop